青い海へ帆を掲げ 「台湾ヨット界の父」詹正峰さんの軌跡
スポーティなTシャツと短パン、よく日焼けした精悍な体つきによく通る大きな声が印象的な詹正峰さんは、今年で83歳。今も高雄市帆船委員会の総幹事を務めるほか、昨年八月にはエンジンを搭載しないR16クラスの小型二胴帆舟を操り、60日かけて台湾を反時計回りに一周するという快挙をなしとげた。
「台湾ヨット界の父」と呼ばれる詹さんとヨットとの出会いは、詹さんの「ひとめぼれ」だった。「1972年当時、台湾にはまだヨットがありませんでした。私は外国でそれを一目見たとたん、すぐ夢中になりました」。そう語る目にはヨットへの情熱がにじみ出る。大海を自由自在に進むその姿に、詹さんは一目であこがれを抱いた。
詹さんはこれまで、競技の開催、ヨットクラブの設立、海域開放を求める活動などを通じて、多くのすぐれたヨット操者を育てるとともに、台湾ではなじみの薄かったヨット文化の普及にも努めてきた。初心者は、セイル、ロープ、滑車、センターボードなど、まずはヨットの構造と各部の役割を知るところから始めるとよいそうだ。次に風向き、水流などを理解し、出航に適した位置を見きわめる。出航後は風に合わせて舵を切りながら、海上のあらゆる変化にすぐ対応するため、常に柔軟な判断をする必要がある。安全な航海には、経験の積み重ねが欠かせない。詹さんは「海の危険性をけっして甘く見ないこと。命がけの無茶はいけません。スポーツは『安全』が第一です。どんなに面白くて刺激的でも、安全でなくてはスポーツとはいえません」と注意を促した。
「高雄は気候が安定しているので、一年中ヨットの練習ができます。河も海もあり、ヨットスポーツの発展には最適です」。1972にヨットと出会い、風を追い求める人生は50年を超えた。その間、海上解放や海上スポーツの普及に多大な貢献をしただけでなく、世界各地を巡り、13時間タイランド湾横断に挑戦するなど、ヨット操者としての業績も枚挙にいとまがない。「台湾ヨット界の父」は老いても衰えることなく、努力でもって不可能を可能にし続けている。
写真提供:高雄市光栄小学校